あなたは渾身の力を込めて、まだ形状が不確定な赤黒いソレを蹴飛ばした。
腐りきった死肉を蹴るとこんな感触だろうか。
どこか冷静な分析をする自分に少し戸惑うあなた。
バシャッ
水風船が破裂するような音を立て、赤黒い肉の塊は四散した。
樽や壁に不気味なシミを作る。
ともかく、一時の安心を得ることができたあなたは、扉に向かって一歩を踏み出した。
ぐしゃり
特に何かにつまづいたわけではない。
しかしあなたは派手に転んでしまった。
床が腐っていて踏み抜いてしまったような感覚。
しかし腐っていたのは床ではなかった。
肉塊を蹴った足が崩壊している。
痛みは無いが、感覚もない。
慌てて衣服を裂き、足の状況を確認するあなた。
赤紫色のアザのような変色が徐々に浸食してきていた。